レンジの過去

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 元々、人付き合いがそんなに得意な方ではありませんでした。

 

女性だけが苦手とかではなくて、そもそも人と関わるのが得意ではありませんでした。

大人数でいるとその中でどうやって振る舞ったらいいかわからないような人間だったのです。

友達と2人で会話している時は普通に会話しているのに複数人の会話になると、急に黙り込んでしまっていたんですね。

 

元々のコミュニケーション能力はそこまで高いものではありませんでした。

もちろん、最低限のコミュニケーションぐらいはありましたが、お世辞にもコミュニケーションがうまいとは言えない。

そんな人間でした。

 

 

でも、そんな僕でも中学生になるころには年相応に周りの女性のことを意識し始めて、恋愛感情も芽生えていました。

ごく一般的な発情期ですね。

そして、小学校を卒業したばかりの僕にも初恋の時がやってきたのです。

 

確か、背の低い可愛らしい女性だったと思います。

中学校に入学して、新しいクラスで過ごしているうちに自然とその女性のことを目で追いかけていました。

あぁ、これが恋なんだな。

なんとなくの感じでそう思ったことを今でも覚えています。

 

その時の僕は、まだその身で恋愛を経験したことはありませんでしたが、漫画などで恋愛という概念については知っていました。

それにやはりただの中学生です。

恋愛には興味津々だったんですね。

そうなると当然、頭の中ではその子と付き合いたいと思うようになります。

そこまで考えた僕はさっそく行動を始めました。

 

堂々と正面から、好きな女性に話しかけて…。

なんて度胸もコミュニケーション能力も当時の僕にはありませんでした。

 

その結果、当時の僕が取った行動はおよそ男らしいとは言えない行動でした。

 

あの時の僕がどんな感情で何を考えていたかはもう思い出せませんが、恐らく、初めての恋愛でどうしたらいいかわからなかったのでしょう。

仲の良かったクラスの委員長の女友達に、次の席替えで僕と好きな娘が隣の席になるように細工してくれと頼みました。

もう、この時点でアウトなのですが、その女友達も結構ノリの良い子で二つ返事で引き受けてくれたのです。

当時、親に買ってもらったばかりの携帯を使って、メールで何回も打ち合わせをしていました。

 

一歩ずつ憧れの子に近づいていっている。

自分の初恋がこれで成就するんだ!

ついに漫画で見ていたような甘酸っぱい、青春ど真ん中の恋愛ができるんだ!

 

たかが席替え1つですが、それまでにないほどワクワクしていたことだけは覚えています。

 

 

でも、そう事はうまく行きませんでした。

そろそろ席替えかというところで僕は痛恨のミスを犯しました。

なんと委員長の女友達とのメールを間違って好きな女性に送信してしまったんですね。

 

どうあがいても取り返せないミスです。

僕がやろうとしていたことは完全にバレました。

 

その後は語るまでもなく、好きな女性からの印象が悪くなり、結局、初恋が実ることはありませんでした。

 

 

もちろん、全面的に僕が悪いことは間違いありません。

完全に自爆ですし、やっていることも褒められたことではありません。

もし、今の僕がタイムスリップして当時の僕に会えるのなら一発引っぱたいていると思います。

 

 

でも、その時は初めて好きになった女性に受け入れてもらえなかった。

そのことにしか意識がいっていなかった僕は「あぁ、自分は女性に縁がないんだ」と考え始めてしまったのです。

 

その「初恋事件」以来、僕の中には「自分は女性に縁がない」という意識が常に渦を巻いていました。

完全に自業自得とはいえ、事件の影響もあり、女性に苦手意識を持ってしまいました。

その苦手意識はその後ずっと消えることなく、いつまでも僕の心の中に残り続けていました。

 

もちろん、苦手意識を持ってしまっただけで決して女性への興味が消えたわけではありません。

女性に興味はあるけど何となく苦手だし、どうやって接したらいいかもわからないという状態に陥っていたんですね。

 

まぁ、どうにかなるでしょ(笑)

中学生の時の初恋の失敗以来、女性に変な苦手意識を抱えてしまった僕はその苦手意識が消えないまま成長していきました。

今でこそ、初恋のときのことが原因で女性に苦手意識を持ってしまったとハッキリわかっています。

 

でも、当時はまだそれを理解していなかったので、大した理由もなく何となく女性が苦手。

普通にしていたら普通に女性が苦手になった、そんな風に考えていました。

 

 

そして、それは高校に入学しても変わることはありませんでした。

もちろん多感な時期なので気になる女性ができたりもします。

でも、苦手意識を抱えてしまっているせいで、自分から積極的に行動を起こそうという気になれませんでした。

しかも、高校時代は野球部に所属していたこともあって、恋愛にエネルギーを割いていられなかったんですね。

 

青春のど真ん中にいながら、恋愛に関してはただ悶々とした気持ちを持ちながら、ただただ時間が過ぎていくだけでした。

そして、当時の僕はそんな状況だったにも関わらず、恋愛に対してどこか楽観的に考えていたんですね。

 

「何だかんだいって、いつかはいい感じに彼女ができるだろうし、恋愛なんて今、頑張らなくたっていいんじゃね?」

「まぁ、どうにかなるでしょ(笑)」

 

自分が女性に対して苦手意識を持っているとわかっていながら、その時の僕は恋愛に対して舐め腐った態度でいました。

だから、自分自身の恋愛に対して何のアクションを起こそうともしなかったんですね。

そして、ついにそのツケを支払う時が来てしまいました…

 

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